人気ブログランキング | 話題のタグを見る
美容形成外科後遺症:エラ削り後遺症
先日 某形成外科准教授の書かれた文章に「一般論として非形成外科医による美容手術においてトラブルが起きることが多い」との一文を目にしました。 

しかし臨床の現場からはホントかな?という感じがします。
なぜなら私の勤務しているクリニックではむしろ形成外科医による深刻なトラブルケースが多いからです。 所属する団体によってトラブルが多い少ないと評するのは意味がないことだとは思いますが一方的に非形成外科医で美容外科に従事している医師達がこきおろされているのもなんですから形成外科医に執刀された問題症例を例として供覧したいと思います。

本日ご紹介の患者さんは形成外科専門医であり日本美容外科学会(JSAPS)の医師によって手術をお受けになられた患者さんです。
既往は2年前に同医師の執刀でエラ骨骨切り術をお受けになられたとのことでお悩みの点はエラを削られすぎてしまったことによるエラがない特異な顔貌とエラの左右差と術後より生じている頑固な痺れと構語(発語)の多少の困難さでした。

あまりもの異常な状態に提携病院に3DCT(立体CT)の撮影を依頼しました。

左:骨格模型です。   左:患者さんの立体CTです。
美容形成外科後遺症:エラ削り後遺症_d0092965_1383132.jpg

右の頭蓋骨模型写真と比較すると左側写真において赤→のところはエラが削られすぎているのがわかると思います。
青→のところは骨棘ができてそとからボコッとふれる塊となっています。

左斜め後ろからみてみます。
左:骨格模型です。   左:患者さんの立体CTです。
美容形成外科後遺症:エラ削り後遺症_d0092965_1631174.jpg

左の骨格模型でピンク色の線が模型上にひいてあるところが下歯槽神経(下顎神経)が通っているところ(下顎管)になります。 左の写真で赤→のところが下歯槽神経が下顎管に入っていく下顎孔になります。かなりギリギリのところで骨切りがなされています。

下顎孔をわかりやすくするため緑の点線で囲いました。
美容形成外科後遺症:エラ削り後遺症_d0092965_1384987.jpg

かなりギリギリのところで骨が切られているのがわかると思います。

右斜め後ろからみてみます。
美容形成外科後遺症:エラ削り後遺症_d0092965_138584.jpg

下顎孔からはいった下歯槽神経が通っている下顎管が左エラ骨切り後の骨縁で露出しています。 下歯槽神経の露出、損傷が疑われる所見です。

今まで同じ医院から輪郭手術後のトラブルを抱えた何名かの患者さんが相談にいらっしゃっています。
私はここでその医師の個人攻撃をするつもりは全くありません。
仮に99.5%の成功率の医師でも件数を多く行っていればそれだけ不具合を生じた患者さんが多く生じるのかもしれません。 すなわち年間1000例執刀している医師であれば99.5%の成功率でも5名の不具合患者さんが発生します。 100例しか執刀していなければ1名生じるか生じないかになります。
医師の手術技術の程度を数値化するは難しいのが現状です。
しかし形成外科診療の片手間に美容外科を標榜している医師に公的な場の文章で一方的に総執刀数や不具合発生率を一顧だにせず「一般論として非形成外科医による美容手術においてトラブルが起きることが多い」と記載されては日々美容外科に専従する医師達はたまったものではありません。 

私が診療を行っているクリニックは場所とメニューを一般患者さんに通知するホームページを除いて一切の有料広告を行っておりません。 それでも私の元にきてくださる患者さんは現状をどうにかしたいと必死に情報を集めてきてくださる方々ばかりです。 美容外科手術は形成外科専門医の執刀が安心とのことで最初そのような標榜をする医師に執刀されその後不具合により再手術、修正手術を希望され私の元を訪れる方々が多いのが実情です。

私個人は美容外科は独立標榜科であり形成外科とも整形外科とも異なる科でありいかなる科の医師も美容外科に従事するのであれば熟達した美容外科医師の指導を受けるべきだと考えています。形成外科の延長もしくは片手間に美容外科が行えると考えているのならばそれは傲慢であると思います。

ここで述べたいのは美容外科手術を行うのに形成外科医が良いとか悪いとかいう次元ではありません。 私にも技術、人格ともにすばらしいと認める形成外科専門医の先生がいます。そんな先生の執刀を経て私の元にこられると恐縮してしまいます。もちろん私の執刀で納得がいかず形成外科専門医を含む他院に行かれている患者さんもいらっしゃると思います。

御高名な先生が執刀されたケースでも「え?あの先生が本当に執刀して今の状態なのですか??」というような症例もたくさんご相談にいらっしゃいます。

日々の臨床の経験でいえることはどんな御高名な先生でも万人を満足させる美容外科手術はできていないということです。

先日記載させていただいた山口大学元教授の柴田先生のおっしゃるとおり専門医制度は医の堕落の始まりと考えます。医者同士のアイデンティティー確認のためならいざしらず、患者さんを集めるための標榜道具としたらこれほど下劣なものはありません。「○○専門医だから安心」ということは「○○大学卒の医師だから安心」と同様のレベルであり、そのような宣伝をして患者さんを集める事自体が品性がないと思います。 また自己が所属する団体の所属の有無で良医であるか否かを判断するのも視野が狭いとしかいいようがありません。


今日は高校の同窓会でした。 他学部卒業後に社会人を経て医学部に入りなおしてあと数ヶ月で研修を終え今度小児科の医局に入局する予定のT君といいお酒が飲めました。
数多き科の中でも小児科、産婦人科は特に忙しい科だとは思いますが初心を忘れず頑張ってください。 応援しています。 
by shirayuribeauty | 2007-12-30 01:39 | 美容外科
<< 両側小陰唇縮小形成術、陰核包皮... 頬骨(きょうこつ)アーチリダク... >>