ふくらはぎスリム形成術 (NICR(非切開式腓腹筋退縮術))
本日ご紹介の患者さんはふくらはぎスリム形成術 (NICR(非切開式腓腹筋退縮術):皮膚切開を行わず選択的神経処理を行う術式)をお受けになられた患者さんです。


左:術前です。                 右:術後5週間再診時です。
(写真は患者さんの快諾を得て供覧しています)
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術前より周径が左はー2cm 右はー1cm細くなりました。
もともと左が右に比べて太かったのでバランスがとれてきて良い感じです。

私の術後の生活の細かい指導面において説明が至らず、術後翌日より朝から晩までの立ち仕事をなされたせいか徐々に腫れが悪化し歩行困難が生じました。 
再診時に腫れが落ち着くまでしばらくお仕事をお休みするようにお願いしましたが都合上なかなか休めないとのことで治療もスムーズにいかず難渋しましたが無事腫れも引いてきて現在の状態です。
しかし術後4週ぐらいに腫れが引いてきて一週間ぐらい前からそれまでなかった足底のしびれが立ち仕事が続くと感じるようになってきたとのことで要経過観察です。


NICRの考えられる主たるリスク
1.術後血腫

 術後血腫を生じそれが吸収されるまで歩行困難を生じる可能性があります。
 術後1週間は日常生活に必要な歩行以外はなるべく安静にしてください。 術後翌日から立ち仕事でハードな勤務をされた方の下腿に血腫が形成されその結果足が腫れ、連日勤務を痛み止めを飲みながら続けた結果、術後日に日に症状が悪化し歩行障害を生じたケースがあります。 

2.肺塞栓症の危険性

 ふくらはぎに血腫が生じるとそれが静脈の還流を障害し血栓を生じる可能性があります。
 それが肺に飛ぶと肺塞栓症という致命的な合併症を引き起こす可能性は否定はできません。
 この手術が原因で肺塞栓症を生じたという報告は見聞したことはありませんが可能性は否定できません。

3.複合性局所疼痛症候群 Complex regional pain syndrome: CRPS を起こす可能性

複合性局所疼痛症候群 とは外傷(骨折・打撲・捻挫など)をきっかけとして、慢性的な痛み(慢性疼痛)が起きたり、慢性疼痛に加えて、局所の浮腫、皮膚温度の異常、発汗異常などの症状を伴うことのある病態です。

例えば採血検査をされた後、通常は治癒する痛みが慢性化し皮膚の萎縮が起きることがあります。筋肉だけでなくて骨の萎縮(骨粗鬆症)が進行する事があります。痛みがあるので動かさないでいると関節の可動性の低下による運動障害が起きてきて最終的には関節の拘縮まで起きて、その手が使えなくなることまでおこる場合があります。

血液検査だろうと脂肪吸引だとうとなんだろうと体にメスをいれる以上は複合性局所疼痛症候群を生じる可能性はあります。 しかし通常は非常に稀なので不必要に患者さんに畏怖心を生じさせないためにそのような説明をせずに我々一般の医師は採血等の処置や手術を行っています。

NICRだからといってその可能性が高まる証拠は現時点ではないし、NICRで複合性局所疼痛症候群を生じたという報告も未だ見聞したことはありません。 しかし本邦において新しい施術法を行うにあたっては可能な限り考えうるリスクを明示化するべきであるという考えにより記載しています。

4.術後足底部しびれ感出現の可能性
足底部の感覚支配神経は内側足底神経、外側足底神経からなりこれらは脛骨神経の分岐神経です。
脛骨神経はNICRで施術操作をする腓腹筋の下のヒラメ筋の下を走っておりNICRの施術操作での損傷の可能性は考えにくいです(NICRのneedleの先端が腓腹筋に入るのにかなりの抵抗を要し、ヒラメ筋でも同様もしくはそれ以上の抵抗を要するため無自覚にヒラメ筋に刺入することはまずないと考えられます)。 本紹介症例においては術後4週を経て立ち仕事の経時的負荷によりしびれが出現していることにより、あくまでも仮説ですがNICRにより萎縮した腓腹筋の代替として必死に機能しているヒラメ筋の緊張により脛骨神経が圧迫されてしびれ感が生じている可能性があります。

私は整形外科医時代に何件も同部位の下腿の骨折修復手術やamputation(切断術)等行い、かつこのNICRの施術開始に備えて日本国内で5体のご遺体、タイ国で3体のご遺体の下腿を解剖させていただき本術式の開発者である韓国のcho先生に直接御指導を賜りかつ解剖学を何度も復習し一例一例慎重にこの施術を行っていますがこのような合併症が生じています。

この術式を学ぶ機会を与えてくださった関係諸者には深く感謝しますが一般的な宣伝で「機能障害などの副作用の心配がほとんどない」とするのはやはり疑義が生じます。 近日韓国のcho医師を再度訪ねる予定なのでより綿密にこの術式における諸問題について討議を重ねてきます。

もちろんこのしびれ感もいままでの臨床医の経験的感覚からいえば術後の一時的なもので経過観察で十分良くなって消失しそうな予感はします。


この患者さんからお心遣いをいただきました。
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術後の大変な時期を乗り越えたと思ったらしびれ感が生じご不安だと思います。
体の機能が慣れるまでの一時的なものだと思います。 お心遣いをいただき恐縮です。
御心配なことがあれば御遠慮なさらずまた再診にいらしてください。 
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by shirayuribeauty | 2009-06-24 01:53 | 美容外科
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