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ルフォー(LeFort)Ⅰ型上顎骨切術(中顔面短縮術)+下顎矢状分割術 術後2週間
本日ご紹介の患者さんは既往として歯科矯正をお受けになられたことがありその後「前歯が後方かつ下方に下がったのが気になる」ということと中顔面の短縮をご希望されました。リフトもご希望でしたが、まず中顔面短縮後 腫れが落ち着いた状態で再評価し最小限な侵襲で最大限の効果を得るようなリフトをしましょうということとなりました。

 中顔面短縮に関しましてはカウンセリングの結果ルフォー(LeFort)Ⅰ型+SSROに付随するリスクをご理解の上、 口元を3mm前方移動して口元が後方に引っ込みすぎたという悩みを改善し、前方は5mm後方は7mm上顎骨を拳上し上顎骨を時計回り回転させて小顔化することとなりました。

左:術前です                 右: SSRO 術後2週間再診時です
ルフォー(LeFort)Ⅰ型上顎骨切術(中顔面短縮術)+下顎矢状分割術 術後2週間_d0092965_2191667.jpg

上顎の拳上は上顎の馬蹄形骨切術と蛇腹骨切術を併用し可能かなぎり鼻腔容積の温存と鼻中隔彎曲を予防しています。
ご感想は「まだ腫れていてわかりません」とのことでした。
その後 術後の咬合チェックは定期的にみせていただきたく頻回の再診をお願いしましたがお忙しいとのことでなかなか再診にいらしていただけておりません。
上下顎骨切術をお受けになられる場合は術後の頻回の再診がきちんとした咬合の確立のために重要なので熟慮いただければと思います。

またの御再診をお待ちしております。


ルフォー (Le Fort) I 型骨切術 、下顎矢状分割術(SSM:sagittal splitting method of mandibular ramus またはSSRO:sagittal splitting ramus osteotomy )のリスク

1.全身麻酔の事故のリスク (約7万件の全身麻酔に1件の麻酔死亡事故確率の統計調査報告等あります)
2.術後の腫れによる気道閉塞 → 気管切開等必要になる可能性
3.感染
4.プレートやネジがゆるんだりして再手術になる可能性  
5.咬合の安定化まで時間を要する。場合によっては術後矯正が必要になる可能性。
6.眼窩下神経麻痺や下歯槽神経麻痺の可能性
7.出血
8.鼻中隔湾曲が生じる可能性
9.口蓋瘻が生じる可能性
10.鼻の形態が変わる可能性
11.歯の違和感がしばらく残存する可能性
12.蝶口蓋動脈や大口蓋動脈に動脈瘤が生じ術後しばらくして突然止血困難な鼻血出血が生じる可能性
13. 術後耳管機能障害を発症する可能性(通常は数日から数週で改善しますが絶対改善するという保証もできません)
上下顎骨同時骨切り手術後に生じる耳管機能障害について
Author:島津 薫(大阪歯科大学 耳鼻咽喉科学講座), 毛利 大介, 城山 明宏, 青木 秀哲
Source:口腔・咽頭科(0917-5105)20巻1号 Page54(2007.08)」
にて数十パーセントの発症確率が報告されています。
14.外国の報告においては発生率は稀と思われますが「失明」の報告があります。(一応この合併症を避けえる術法はありとされており私もその術法にのっとって手術をおこないますが絶対おこらない保証はありません。) 日本国内のケースでは私が浅学なのか見聞したことはありません



13の耳管機能障害に関する大阪歯科大学 島津先生らの報告の要約

Lefort I型骨切り症例において,上顎骨の移動方向と耳管機能検査[インピーダンス検査
(TM)悪化の関係では,前下方移動では81.3%,前方移動では80.0%,下方移動では62.5%,前上方移動では25.0%,上方移動では11.1%に術後TM悪化を認め,前方移動と下方移動において有意に耳管機能障害を認めた.術後に生じた耳管機能障害に対して33例にカテーテル通気治療を行い最短2日最長16日,平均7.69日で治癒した.上顎歯槽骨術後に生じる耳管機能異常は軟口蓋の形態変化に伴う嚥下運動の不調和と口蓋帆張筋の伸展や収縮がもたらす耳管の開放不全と推察される.また,術後の鼻閉と咽頭部違和感のためのSniffingが術後の中耳陰圧を助長していると思われる.


上述のようにLeFortⅠ型骨切術+SSROにはさまざまなトラブルが起こり得ます。
手術をお考えの方々はそれらを熟慮し本当にご自身にとって必要なのか熟慮していただければと思います。
by shirayuribeauty | 2015-09-23 23:09 | 美容外科
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