他院セットバック後遺症
本日ご紹介の患者さんは他院にてセットバックをうけたら既往のある患者さんです。

今年某クリニックにて上下セットバックをうけるも「上あごが下がりすぎて別人のようになった。」
「上顎の右の犬歯から左の犬歯にいたる前歯全部がグラグラ動揺する。」「かみ合わせがおかしい。」との訴えを執刀医に伝えたところ 「もう元の顔に戻すことはできません。 1番~3番すべての歯をセラミックのブリッジにしたら大丈夫。 そのうち元に戻ります。 慣れます。」との返答をされたとのことでした。

 あまりのショックでひきこもったとのことで 術後約半年の引きこもり期間を経て私のカウンセリングにいらっしゃいました。

手術時の所見はうりざね顔(別名三日月顔 , 凹顔, concave type)の状態になっており歯のかみ合わせは切端咬合、右上3番~左上3番までの上顎前歯は同様している状態でした。

いったいどうして美容外科的にこのような顔にデザインしたのか患者さんにお尋ねしたところどのくらい下げるか打ち合わせがなく手術当日に担当医に話したら「うまいようにやります」との返答で現状のようになったとのことでした。

追記(20131113)
オペの前に、上前歯2番が一本だけ奥に入っていると上顎を下げられないから抜きます、と言われそうなの?と患者さんはよくわからず了承したと訂正メールを患者さんからいただきました。

術後目が覚めたら左上2番(左側切歯)は抜かれており前歯の切縁も削られ歯が短くなっていたとのことでした。 その後前歯の知覚過敏症状も出現したとのことでした。


あまりの異常な状態にまずは立体CTを撮影して現在の顔面骨、歯槽骨、歯の状態を調べることにしました。

左側面立体CT像です。
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左上顎の上顎歯三番(犬歯)と五番(第二小臼歯)の間相当部分に骨欠損を認めしかも五番(第二小臼歯)の歯根部相当部に骨がありません。

拡大してみます。
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第二小臼歯近心側の歯槽骨はなく第二小臼歯は遠心側の歯根膜にてどうにか遠心部の歯槽骨に保持されている状態です。 口腔内と上顎洞が交通していることが予想されます。

右側面立体CT像です。
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右上顎の上顎歯三番(犬歯)と五番(第二小臼歯)の間相当部分に骨欠損を認めしかも五番(第二小臼歯)の歯根部相当部に骨がありません。

拡大してみます。
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第二小臼歯周辺の近心側の歯槽骨はなく第二小臼歯は遠心側の歯根膜にてどうにか遠心部の歯槽骨に保持されている状態です。 口腔内と上顎洞が交通していることが予想されます。


このまま歯周ポケットを放置すれば早晩これら第二小臼歯は抜けてしまうでしょう。
治療しても保存は難しいかもしれません。

なんでこんな手術がなされているのかわけがわからずどうしてそのクリニックを選択したのか尋ねてみると よく広告しておりインターネットでみれる症例写真も多く医師のみならず歯科医師も在籍しているので大丈夫だと思ったとのことでした。


もちろん私は患者さんの術前の状態を診ていませんのでわかりませんが(もともと第二小臼歯の近心側に歯周病があって歯槽骨がなかったのかもしれません・・・左右対称に第二小臼歯だけ歯周病というのは限りなく可能性は低いと思いますが) これは歯科医師が関与した仕事ぶりには思えません。

こんな咬合(切端咬合かつ見た目がまるでAngleⅢ級の下顎前突様かみ合わせ)を骨切手術までして仕上げていたとしたら関与した歯科医師の力量を疑ってしまいます。

また上顎の左2番(側切歯)が一本奥に入っていると下げられないからとの説明で抜かれたとのことですが仮に左上顎側切歯が口蓋側転位していても、セットバックの手術を遂行するのになぜ抜かなければならないのか理解できません。 

まるでその後にそこのクリニックで前歯部ブリッジを勧めるために抜いたのか!?といらぬ勘繰りをしてしまいます。

矯正とディスキング:IPR(Interproximal enamel reduction)でこの方の歯はセットバック後でもそれなりに綺麗に整えて並べて差し上げることができたはずだと思います。

仮に医師単独でこの仕事をしたとしたらそれはそれでなぜ咬合が関与するこの手術に同施設の歯科医師の意見や知恵を拝借しなかったのかが問題だと思います。


いずれにしろ後医は名医であり前医の苦労をしらないで私がこのような意見を述べるのは失礼だとは思いつつも患者さんの言葉を信じるのであれば術前の歯科的精査や分析もなくこのような術後トラブル(顔貌の仕上がりの問題だけでなく切端咬合、前歯部動揺、歯周ポケットの存在、左側切歯の欠損)を招くのはあまりにも患者さんがかわいそうだと思います。



美容外科手術の術後患者さんの中には通常の医学と歯科医学の狭間でその隣接領域のエアポケットに落ち込み悩み苦しまれる患者さんが数多くいらっしゃいます。



咬合が関与される手術をお受けになられる場合はその施設がどのような方法で患者さんらの悩みを解決するべく手段を講じているかよくご検討なされたほうがよいと思います。

口が閉じた状態の症例写真だけからでは咬合や歯科的問題は汲み取れません。

もちろん一般の患者さんがそこまで深い洞察をして症例写真を検討したりクリニックを選ぶのは非常に聡明かつ博識な方でないかぎり不可能だと思います。

だからこそ施術の御依頼をうける側は必死に勉強をしてかつ当該領域に造詣の深い医師・歯科医師と連携し患者さんの治療にあたるべきであり、仮にそのような対策をしたとしても様々な機能障害を生じる可能性がある以上決して目先の売り上げや金儲けのために手術効果を宣伝広告したり患者さんを手術に誘引してはならないと思います。
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by shirayuribeauty | 2013-11-01 23:47 | 美容外科
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